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真魚 八重子「映画でくつろぐ夜」

真魚八重子「映画でくつろぐ夜。」 第21夜

Netflixにアマプラ、WOWOWに金ロー、YouTube。
映画を見ながら過ごす夜に憧れるけど、選択肢が多すぎて選んでいるだけで疲れちゃう。
そんなあなたにお届けする予告編だけでグッと来る映画。ぐっと来たら週末に本編を楽しむもよし、見ないままシェアするもよし。
そんな襟を正さなくても満足できる映画ライフを「キネマ旬報」や「映画秘宝」のライター真魚八重子が提案します。

■■本日の作品■■
『神と共に 第一章:罪と罰』(18年)
『真夜中の弥次さん喜多さん』(05年)

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

マンガと映画

 最近は老眼で本を読むのがつらくなってしまったが、以前は活字中毒のようなところがあって、四六時中本を読んでいた。もちろんマンガもとても好きだ。ただ、あまり金銭の話はしたくないと思いつつも、マンガはあっという間に読み終わるので、もったいない気がしてしまう。なので美術として眺められる緻密な絵柄のマンガが好きだった。貧乏性だとこんな感覚が生まれるのが恥ずかしい。

 幼稚園や小学校低学年くらいまでは『りぼん』を読んでいた。でも、じつはわたしが買っていたわけではない。10歳年上の長兄が少女マンガ好きで、毎月『りぼん』を買っていたのだ。不思議なもので、我が家には兄が2人いるが『ジャンプ』的なものは全然なかった。マンガが置いてある病院の待合室や、親と喫茶店へ行ったときに読むくらいしか、少年マンガを手にする機会はなかった。

 『りぼん』はある意味、部屋にあるから読んでいただけで、あまり趣味ではなかった。途中からは『パタリロ!』が読みたくて『花とゆめ』派に転向した。年齢が上がるにつれて、そういう変化をした人が多かったかもしれない。でも『花とゆめ』を読みだす前から、BL系のマンガに触れる機会は自然と存在していたと思う。萩尾望都は当時から尊敬されて伝説のような存在だったし、『アラミス’78』のような美青年を巡る男女入り乱れてのラブコメや、『エロイカより愛をこめて』のブロマンスも素地になっていると思う。

 中学生からは雑食で少年マンガも読むようになり、楳図かずお先生にドハマリした。小さい頃に近所のお姉さんの家で『洗礼』のコミックを読んだときは、まさに戦慄するほど怖くて読んだことを後悔したが、そのインパクトは恐怖を乗り越えてしまうと強烈な魅力となった。楳図先生の絵は恐ろしさと美貌が紙一重だ。大人になってくると『おろち』の主人公は美人なのだということも理解できるようになった。

 楳図先生の『神の左手悪魔の右手』の「女王蜘蛛の舌」は、蜘蛛嫌いのわたしには卒倒しそうな内容だった。だが一番好きな回だ。蜘蛛女は高品という男性に心惹かれて彼を夫にしようとする。美しい蜘蛛女に迫られた高品は気を失いそうになりながら、マンガの絵はキスしてくる蜘蛛女に対し、彼は唇を開いて受け入れている。だが主人公の想はまだ子どもなので、そんな大人の関係性を理解せずに蜘蛛女を退治しようとする。相手が化け物であっても、ひたむきな愛を受け入れるような男女の成り行きが、妙に心に残った。

 マンガの質が高いので、日本でマンガ原作の映画が多いのは当然だろう。最近だと韓国でWEBマンガを原作にした映画も目につく。やはりIT先進国らしい現象だと思うが、日本もWEBマンガで良いものは多いのに、大きなプラットホームがなくて著者自身の告知がバズるケースが中心で、散発的になってしまう。日本のWEBマンガをまとめたメジャーサイトが欲しいと思う。

<オススメの作品>
『神と共に 第一章:罪と罰』(18年)

『神と共に 第一章:罪と罰』

監督:キム・ヨンファ
出演者:ハ・ジョンウ/チュ・ジフン/キム・ヒャンギ/チャ・テヒョン

 韓国の人気WEBマンガの映画化作品といえばコレ。消火の作業現場で死を迎える消防士ジャホン。彼の前に突然3人の冥界の使者たちが現れる。彼らは、これからジャホンが転生できるか、地獄落ちするかを決める裁判の旅で弁護人を務めるという。古風な地獄めぐりの設定に、イマドキのアクション映画のような風味を加えた奇想天外な映画。いまさらエンマ大王が出てくる映画を観るなんて想像もしていなかったが、3人の使者たちがかっこよくて楽しく観られる。地上での動きがなんだか変わっていて面白い。本作の第二章は『エターナルズ』でハリウッド進出も果たしたマ・ドンソクが主演。

『真夜中の弥次さん喜多さん』(05年)

『真夜中の弥次さん喜多さん』

監督・脚本:宮藤官九郎
原作:しりあがり寿
出演者:長瀬智也/中村七之助/小池栄子

 色々思い返してみたが、一番好きなマンガ原作映画は本作かもしれない。面白いしゲストも豪華で、今観るとお金もかかっていて贅沢な気分になる。しりあがり寿の原作マンガといい、どこか90年代的なサブカル要素もあるけれど、恋人との別れや死、狂気への底知れぬ不安が漂っていて、ただ笑える映画では終わっていない一抹の暗さも好きだ。長瀬智也は俳優として非常に素晴らしかったので、引退はショックだった。本作は短編集のような趣があるので、あまり気負わずに観られるのもいい。

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

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ライター紹介

真魚 八重子
映画ライター
映画評論家。朝日新聞やぴあ、『週刊文春CINEMA!』などで映画に関する原稿を中心に執筆。
著書に『映画系女子がゆく!』(青弓社)、『血とエロスはいとこ同士 エモーショナル・ムーヴィ宣言』(Pヴァイン)等がある。2022年11月2日には初エッセイ『心の壊し方日記』(左右社)が発売。
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